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恋人役から始まる共闘

小説ID: cmo5wuqbr001301s21k0n7lce

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翌日、蓮はミオの公開配信の記録と、彼女がその前後に立ち寄った場所の時刻を重ね合わせていた。画面に映る笑顔の裏で、移動の偏りが不自然なほど一定に揃っている。配信後にだけ届く連絡、帰路を変えた日に限って現れる影、スタッフ経由で届く遠回しな言葉。どれも偶然としては薄すぎた。 「相手は、君を見張っているだけじゃない」 蓮がそう言うと、ミオは椅子の端に浅く座ったまま唇を結んだ。相葉は机に並べた資料を指先で押さえ、別の写真を広げる。そこには、表向きは支援者を名乗る男の姿があった。イベント会社の役員、スポンサー筋とのつながり、配信企画への口出し。見た目は穏やかだが、周囲の人間関係を静かに支配できる位置にいる。 「表では紳士、裏では根回しが速い。単独で動いているように見せて、実際は周囲の脈を握っている可能性が高い」 相葉の声は低かった。彼が突き出した捜査メモには、ミオに接触した人物が同じ系列のイベントに集中していること、連絡の発信元が複数に見えて、実際には一つの回線管理に集約されていることが書かれていた。蓮は一度だけ目を伏せ、頭の中で線を引き直す。偶然ではない。動きの速さも、こちらの反応を探る精度も、誰かが全体を見ているからこそ成立している。 「つまり、君の予定を読んで、逃げ道を先に塞いでいる」 ミオが小さく息を飲んだ。その反応を見て、蓮は配信のコメント欄や告知文の文言まで見直した。公開情報に紛れたヒントがある。次回の収録日、コラボ先、移動の発生する時間帯。相手はそこから先回りし、偶然を装って圧をかけていたのだ。 「でも、一つだけ矛盾がある」 相葉が資料の端を叩く。接触の記録の一部だけ、時刻のつじつまが合わない。誰かが現場にいた痕跡はあるのに、記録上は別の場所にいることになっている。蓮はその違和感を見逃さなかった。偽の足跡だ。ひとりで動いているのではなく、手を貸している者がいる。 ミオの顔から血の気が引いた。蓮はすぐに席を立ち、窓際の反射を確認する。店の外に停まる車、歩道の人の流れ、カメラの位置。もし相手が今もこちらの動きを読んでいるなら、逆に読ませればいい。 「予定を変える。俺たちが追われる側じゃなく、追わせる側になる」 相葉がうなずき、ミオも震える指でスマホを握り直した。三人は短い言葉だけで動きを決め、公開されている次の配信予定をあえて残したまま、裏では別の導線を用意した。仕掛けは静かに、だが確実に組み上がっていく。蓮はその中心で、相手の狙いが人ひとりを遠ざけることではなく、もっと広い流れを支配することだと悟った。だからこそ、崩せる。相手が大きいほど、綻びもまた目立つ。