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土から生まれる器

小説ID: cmnlfe2xi000d01mwcepfbna8

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審査員の口が開いた瞬間、工房のような静けさが会場を包んだ。長い紙をめくる音がやけに大きい。主人公は自分の作品の前で、指先を握ったりほどいたりして待った。見た目の派手さでは、あのライバルに敵わないかもしれない。だが、火をくぐった器の表面には、確かに自分の迷いと決意が残っている。それを信じるしかなかった。やがて呼ばれた名は、予想していた順位よりもずっと上だった。拍手が起こる。驚きで息が止まり、次の瞬間、胸の奥が熱くほどけた。高い点数の理由として、手に取ったときの落ち着き、日常に置いたときの存在感が挙げられる。主人公は、その言葉を聞きながら、勝った負けたの前に、自分の器が誰かの目に届いたのだと知った。視線を上げると、先輩がわずかに頷き、ライバルは悔しそうに笑っていた。その顔を見たとき、なぜか敗北の痛みよりも、心強さが勝った。自分ひとりでは、ここまで来られなかった。技術を叩き込んでくれた先輩も、火に向かう背中を見せたライバルも、失敗を景色に変えるきっかけをくれた仲間も、全部が土の中に混ざっている。主人公は深く頭を下げた。勝敗は確かに残る。けれど、それ以上に残ったのは、競い合うことでしか磨けない手触りだった。会場を出ると、夕方の風が頬をなでた。空は大会の日らしい淡い橙で、遠くの雲が焼き物の肌のように柔らかく見える。主人公は抱えていた箱を持ち直し、次の大会のテーマをもう考え始めていた。今度は、もっと遠くまで土の声を聞いてみたい。あのライバルのように揺るがない強さも、先輩のように景色を見抜く目も、自分の中に少しずつ育てたい。工房へ戻れば、また土が待っている。主人公は振り返らずに歩き出した。静かな町の先に、まだ見ぬ器の形がある気がした。

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