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果てを探す子ども

小説ID: cmnl8pero000q01o24at2iry9

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翌週、ぼくは学校の図書館に足を向けた。校庭より静かで、ページをめくる音まで大きく聞こえる場所だった。世界の果てを探すなら、まず地球の形を知らなければならない。そう思って棚を見上げると、宇宙、星、地球、海という札が、ぼくを順番に待ちかまえていた。 司書の先生に聞くと、分厚い図鑑を二冊出してくれた。ページを開くたび、丸い地球が紙の上でゆっくり回っているように見えた。地面は平らに見えても、世界は大きな球だという。写真には、雲の向こうで青く光る海や、夜の側に沈む街が写っていた。ぼくは思わず息をのんだ。世界の端を探していたのに、端らしい端がどこにもない。 それでも納得できない気持ちは残った。真一が指さした月の写真を見て、どうして光っているのかと聞くと、図鑑は太陽の光を映しているだけだと教えてくれた。じゃあ、地球はどうして落ちないのか。司書の先生は、宇宙には引っ張る力があるとやさしく言った。ぼくはうなずいたが、頭の中では、見えない糸でつながれた風船みたいな地球が、まだふわふわしていた。 その日の午後、家でもう一度話すと、父さんは笑わずに地図帳を開いてくれた。海の向こうに国があり、国の向こうにも海がある。世界は、端で終わるものではなく、名前をつけてつないでいくものらしい。ぼくはページを追いながら、最初に描いた四角い海を思い出した。あれは間違いだらけだったけれど、間違いの中にも、確かめたい気持ちは本物だった。 夜、自分のノートを見返すと、世界の果て発見計画の文字が少しだけ小さく見えた。代わりに、確かめたいこと、聞きたいこと、調べたいことが増えていた。全部を一度に知るのは無理だ。でも、知らないことが増えるたび、世界は狭くなるどころか、もっと広くなる。ぼくは机の上に図鑑を置き、赤い鉛筆で新しい印をつけた。果てを見つける旅は、もしかしたら果てを探し続ける旅そのものなのかもしれない。そう思った瞬間、最初の自信は少しだけひび割れた。けれど、そのひびから、知らない景色が光って見えた。