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果てを探す子ども

小説ID: cmnl8pero000q01o24at2iry9

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次の放課後、ぼくは家じゅうを探検することにした。世界の果てへ行くには、ただの遠足みたいな持ち物では足りない。父さんからもらったコンパスを握りしめ、まずは台所の戸棚を開けた。出てきたのは、アルミの弁当箱、割り箸、輪ゴム、そしてなぜか未使用のしゃもじだった。しゃもじは風をあおぐ道具として使える気がして、ぼくは迷わずカバンに入れた。 続いて押し入れをのぞくと、奥から古いレインコートと、足首まである長靴が出てきた。雨なら旅は止まる。いや、長靴があればむしろ進める。ぼくは自分の考えの正しさにうなずき、さらに懐中電灯の予備電池も見つけた。家の中には宝が眠っている。そう思うと、冒険はもう半分終わったも同然だった。 居間では母さんが洗濯物をたたみながら、何をそんなに真剣に探しているのと聞いた。世界のはしに必要な装備だと答えると、母さんは少し笑って、それなら水筒はいるねと言った。ぼくがうなずく前に、今度は父さんがやってきて、地図を入れるなら大きめのクリアファイルもあると提案した。ぼくはそれを、ついに理解者が現れた合図だと思った。 けれど父さんが差し出したのは、学校の健康診断でもらった体温計と、方位磁石より少し大きいだけの電卓だった。これで何をするのかと聞くと、記録と計算だと言う。旅は勢いだけじゃなく、確かめるための工夫がいるんだよ、と。ぼくにはまだ難しかったが、電卓の角は妙に頼もしく見えた。 弟の光太は、ぼくのカバンをのぞいて大笑いした。しゃもじで怪物を追い払うのかと言うので、これは風よけだと胸を張った。すると光太は、じゃあぬいぐるみも必要だねと、自分の熊を差し出した。ぼくは少し迷ったが、旅の護衛には悪くないと思った。ふわふわした熊は、地球が回っていても落ちなさそうだった。 気がつけば、机の上には役に立ちそうで役に立たないものが並んでいた。赤い鉛筆、虫眼鏡、しゃもじ、長靴、電卓、熊。母さんは苦笑しながら、ずいぶん個性的な遠征隊ねと言った。ぼくは本気だった。必要なものは、まだ見つけていないだけだ。世界の果てには、たぶん普通の道具では届かない。そう信じると、家の中のあらゆる引き出しが、ひそかな秘密の入口に見えてきた。