翌朝、ぼくはいつもより早く目が覚めた。カーテンのすき間から薄い光がのぞき、部屋のすみに置いた地球儀の丸い影が、机の上で静かに待っていた。ぼくはランドセルを開け、赤い鉛筆、メモ帳、方位磁石、そして真一の紙の旗を入れた。世界の果てを探す旅は、もうやめない。やめるのではなく、学ぶための冒険として続けるのだ。そう決めると、胸の奥が少し熱くなった。 台所へ行くと、母さんが朝ごはんを並べていた。今日はどこへ行くのと聞かれて、ぼくは少し考え、それから学校の裏の坂と川だと答えた。母さんは意外そうに笑って、それならおにぎりを多めにしておくねと言った。父さんは新聞をたたみながら、疑問を持つのはいいことだけれど、確かめ方も大事だよと教えてくれた。ぼくはうなずいた。答えだけを欲しがっていたころには、その言葉は入ってこなかった気がする。 校門の前では真一がもう待っていた。今日は紙ナプキンの旗を、昨日より少しまっすぐに立てている。光太も熊のぬいぐるみを抱えて走ってきた。三人で川べりへ向かうと、朝の風は冷たく、草の先に残る露がきらきら光っていた。真一は影の長さを測り、光太は石の並びを数え、ぼくは流れる水の速さを目で追った。どれも小さなことなのに、ひとつずつ確かめるたび、世界が少しずつ輪郭を持ちはじめる。 ぼくはノートのいちばん上に、新しい題を書いた。世界の果てを知るための、最初の観察。書き終えたあと、顔を上げると、川の向こうで朝日が木々の上にのぼっていた。あまりに普通で、あまりにきれいで、ぼくはしばらく言葉を忘れた。果てはまだ見えない。それでも、疑問を持って、聞いて、見て、たしかめるたびに、ぼくの世界は広がっていく。 真一が、次は何を調べると聞いた。ぼくはノートを閉じ、少し考えてから、空だと答えた。すると真一は笑って、いいねえと大きくうなずいた。ぼくも笑った。答えがなくても、進める道はある。ぼくは紙の旗を握り直し、朝日に向かって一歩踏み出した。
果てを探す子ども
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地動説が信じられない小学生が世界の果てを目指して冒険の準備を始めるコメディ
