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雪山仲間と秘密結社

小説ID: cmnl8nauc000001o2i5o5w2bh

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最初の任務は、商店街の秋祭りを手伝うことになった。表向きは人手不足の補助、裏では顔と名前を覚えてもらうための布石である。篠原は胸を張って役割を割り振ったが、実際にはその場の都合で何度も配置が変わり、計画は最初から少しずつ崩れていった。 綾瀬は案内札を作る係だったのに、墨を乾かす前に重ねてしまい、字がひとつの黒い塊になった。真島は荷運びを買って出たが、子どもたちの列に気を取られて箱を置き忘れ、後ろから来た露店の台車をふさいでしまう。篠原は謝罪の言葉を並べながら走り回り、最後には自分のメモまで風に飛ばされた。 言葉を話せない新入りは、失敗のたびに黙って屈み、落ちた札やこぼれた紙を拾い上げた。やがて彼は、倉庫で使っていた黒い手帳を借り、広場の隅に簡単な表を作った。何をしたか、何が乱れたか、次はどう直すか。短い線と記号だけの記録だったが、不思議と誰にでも意味が通じた。 夕方になるころ、みなは自分の失敗を隠さなくなっていた。綾瀬は札を二度干してから描き直し、真島は荷物の置き場に白い紐を結び、篠原は手帳の最後に必ず改善点を書くと決めた。小さな反省が積み重なるたび、彼らの動きは少しずつ揃っていく。 片付けを終えた帰り道、祭りの責任者が篠原たちに封筒を手渡した。中身は謝礼ではなく、翌月の子ども会でも手伝ってほしいという依頼書だった。人脈は増えた。だがそれ以上に、倉庫へ戻った一同は、いつの間にか机の上に並んだ失敗帳の厚みに気づく。世界を変えるための第一歩は、どうやら成功ではなく、何度もつまずいた跡そのものらしかった。篠原は黙って表紙を閉じ、次のページを開いた。